1.建物概要について
本年度の調査対象は、298棟、その延床面積は8,493,175㎡である。1棟当りの延床面積は、平均28,501㎡となっている。
ビルの種類別については、賃貸専用ビルが75.9%、賃貸と自社兼用ビルが22.7%と
なっており、これらの賃貸用ビルが合わせて全体の98.6%を占めている。
ビルの所有等形態別については、所有が60.6%、区分所有・共有が28.3%などとなって
いる。
区域別でみると、所有の比率が最も高いのは中央区の78.6%、最も低いのはその他(都心
3区以外)の47.8%となっている。
ビルの主要構造別については、SRC造が全体の73.4%を占めている。
階数別については、6階~12階未満が全体の70.8%を占めている。
建物の高さ(軒高)別については、32m未満が50.5%、32m~62m未満が31.9%
などの順となっている。
階高(基準階)別については、階高(基準階)3.25m~3.75m未満が全体の
56.3%となっている。
平均天井高は2.60mとなっており、竣工年度が新しくなるほど天井高は高くなっている。
延床面積 年代・規模別内訳 (単位:㎡)
延床面積 区域・規模別内訳 (単位:㎡)
2.敷地の状況
敷地面積については、小規模ビル:355㎡、中規模ビル:935㎡、大規模ビル:6,036㎡で平均3,468㎡となっている。
敷地面積 年代・規模別内訳 (単位:㎡)
年代別でみると、大規模ビルにおいて、昭和51年~平成7年竣工が敷地の大規模化の傾向が顕著である。また、敷地面積の面積割別でみると2,000㎡未満が全体の59.9%を占めている。
敷地の権原別については、自有地が68.6%、借地が11.0%となっている。
最も自有地比率が高い区域は千代田区で76.4%となっている。
また、借地については、普通借地が93.1%となっており、定期借地を大きく上廻って
いる。
建築面積については、小規模ビル:284㎡、中規模ビル:745㎡、大規模ビル:3,725㎡で平均2,222㎡となっている。
年代別でみると、昭和40年以前に竣工した大規模ビルが5,028㎡で最も広く、最も狭いのは、昭和41年~昭和50年に竣工した小規模ビルで233㎡となっている。
また、建築面積の面積割別では300㎡~1,300㎡未満が全体の46.4%を占めている。
建築面積 年代・規模別内訳 (単位:㎡)
ビルの開発手法をみると、「特定街区」「総合設計」「市街地再開発」といった街づくり手法を活用した開発は全体の20.0%となっている。
また、公開空地のあるビルは、全体の25.7%を占めている。
3.建物の利用状況
有効面積比率
ビルの有効面積比率については、小規模ビル:76.7%、中規模ビル:74.2%、大規模
ビル:62.9%(平均63.8%)となっており、規模が大きいビルほど有効面積比率が低
い。。
区域別でみると、その他(都心3区以外)の大規模ビルが60.7%と最も低くなっている。
有効面積比率 年代・規模別内訳 (単位:%)
有効面積比率 区域・規模別内訳 (単位:%)
建物利用用途別分類でみると、事務所50.5%、店舗5.7%などとなっている。
また、共用面積比率は28.5%、駐車場面積比率は7.7%となっている。
オフィスワーカー1人当りの床面積について
契約面積ベースの1人当りの床面積については、小規模ビル:13.6㎡、中規模ビル:12.6㎡、大規模ビル:11.7㎡(平均11.9㎡)となっており、大規模ビルの床面積が若干狭くなっている。
また、区域別でみると、最も広いのは中央区の14.0㎡、最も狭いのは、港区の11.1㎡となっている。
更に、テナント産業別でみると、外資系テナントが19.5㎡、国内の製造業テナントが13.6㎡、国内の非製造業テナントが13.9㎡となっており、外資系テナントの一人当たり床面積が大きいことが分かる。
なお、延床面積ベースの1人当りの床面積については、平均22.9㎡で区域別で差は見られない。
区域別・テナント産業別1人当たりの契約面積ベースの床面積 区域別分類
4.災害対策の状況
地震対策
対策内容別の実施率は、「地震時の情報伝達システム」73.5%、 「食料・水等の備蓄」62.6%、「緊急地震速報」52.9%、「大規模地震時の事業継続計画」42.4%、「安否情報システム」30.7%の順となっている。
緊急地震速報を利用している場合の速報の利用範囲は、「防災センター要員のみ」60.8%となっている。
地震対策のあるビル 年代・規模別内訳 (単位:%)
非常用発電機の設置に関して、「消防法、建築基準法で定められた時間まで運転が可能」は41.5%、「それ以上の時間運転が可能」が58.5%であった。
非常用発電機の運転時間の区域別分類 (単位:棟数)
「消防法、建築基準法で定められた時間以上運転可能な場合の運転可能時間」は、小規模ビル
228分、中規模ビル329分、大規模ビル1,445分となっており、平均は1,089分
であった。
竣工の新しいビルで規模が大きくなるにつれ、運転可能時間は長くなる傾向がある。
新型インフルエンザ対策
新型インフルエンザ対策について、「流行時に対応マニュアルを策定している」ビルは50.2%、「消毒薬を配備する」ビルは86.5%であった。
消毒薬の配備場所は、「玄関ロビー」が69.2%、「洗面所」58.9%、「その他」14.3%であった。
新型インフルエンザ対応マニュアルがあるビルの比率 年代・規模別内訳 (単位:%)
5.バリアフリー対策の状況
バリアフリー対策について、対策が取られていると回答があったのは62.3%であった。
対策があるビルを規模別にみると、小規模ビル:35.7%、中規模ビル:44.4%、大規模ビル:81.8%となっている。
バリアフリー対策があるビルの比率 年代・規模別内訳 (単位:%)
対策を部位別にみた結果は、以下の通りである。
1.トイレ内設備の項目別調査結果
① 車いすが利用できるだけの広さがあり、手すり等を設けた個室が設置されているビルは、62.2%で半数以上のビルで対応が進んでいる。
② 車いす利用者が無理なくスムーズに進入し、自然体で蛇口に手が届く洗面台を設置し
ているビルは、47.2%であった。
③ 人工肛門・人工膀胱を保有されている方のため、汚物流し台、ハンドシャワー、汚物入れボックスなどを設置した個室を確保しているビル(オストメイト対応)は、18.
3%で、対策はこれからといえる。
④ 小人から大人まで利用可能にするため、前方に突き出した受け部(リップ部)を低くした低リップ小便器に対応しているビルは、17.8%であった。
2.エレベーター内設備の項目別調査結果
① エレベーター内の低位置に操作盤等の車いす利用者のための利便設備を備えているビルは、58.9%で半数以上のビルで対応が進んでいる。
② 点字、文字の浮き彫り、音声案内装置等により、視覚障害者が円滑に操作できるよう
対応しているビルは、29.4%で普及はこれからといえる。
6.ビル主要設備の状況
駐車場
全体の85.5%のビルに駐車場が設置されている。
駐車場の設置場所は「ビル内」 73.5%、「立体駐車場」 22.6%、「敷地内」 17.4%、「敷地外」 3.9%、「屋上」 1.3%の順となっている。
電気自動車対応の充電設備については、「充電設備がある」及び「設置予定がある」ビルが、10.0%で、普及はこれからといえる。
駐車場の有無 区域別分類 (単位:棟数) 駐車台数 区域別分類 (単位:棟数)
エレベーターについて
エレベーターの平均設置台数をビルの規模別でみると、小規模ビル:1台、中規模ビル:2台、大規模ビル:9台となっている。
戸開走行保護装置の設置状況をみると、「設置」が26.3%、「一部設置」が2.9%、「設置予定」10.2%、「予定なし」 60.5%となっている。
規模別の設置状況をみると、小規模ビル 40.6%、中規模ビル 35.7%、大規模ビル41.7%となっている。
エレベーター平均設置台数 年代・規模別内訳 (単位:台)
空調設備について
熱源は、「電気」 81.8%、「ガス」 22.3%、「地域冷暖房」 18.2%、 「その他」 2.7%の順となっている。
なお、地域冷暖房の利用率は千代田区が、 40.0%と他の区域と比べて際立って高くなっている。
熱源別空調設備 区域別分類 (単位:件数)
空調の方式は、フロア毎に複数ゾーニングする「個別空調」 68.0%、縦系統で分割する「セントラル空調」 30.2%、「フロア別空調」 17.5%となっている。
蓄熱設備は、全体の10.0%に設置されている。
衛生設備について
パウダールームは、全体の 24.9%に設置されている。
トイレ設備仕様では、「暖房便座」90.8%、「自動水洗や節水便器」53.0%、「ハンドドライヤー」58.0%といった設備の比率が高くなっている。
トイレ設備仕様 区域別分類 (単位:件数)
その他ビル設備について
給湯設備は、全体の98.0%に設置されている。
室内コンセントの容量は、平均50.5VA/㎡であった。規模別では、小規模ビルが46.0VA/㎡、中規模ビルが48.0VA/㎡、大規模ビルが53.3VA/㎡となっている。
7.別途徴収金の徴収形態
(徴収方法と徴収金額)
別途徴収金の徴収方法については、定額徴収が82.1%、実費徴収が17.9%となっている。
別途徴収金の徴収方法 区域別分類 (単位:件数)
また、定額徴収の月額金額は平均で3,778円/坪となっている。
ビルの年代・規模別月額徴収金額は、小規模ビル3,324円/坪、中規模ビル3,681円/坪、大規模ビル4,001円/坪で、規模が大きくなるほど徴収金額は高くなっている。
竣工年代別分類では、昭和40年以前竣工ビルが、3,111円/坪、昭和41~50年竣工ビルが3,885円/坪、昭和51年~60年竣工ビルが3,644円/坪、昭和61~平成7年竣工ビルが3,922円/坪、平成8~17年竣工ビルが4,371円/坪、平成18年以降竣工のビルが4,250円/坪となっている。
竣工年代が新しいビルが、徴収金額が高い傾向となっている。
別途徴収金を定額徴収した場合の年代・規模別月額平均金額 (単位:円/坪)
8.ビルサービスの状況
ビル利便設備について
リフレッシュコーナーについては、全体の24.2%のビルで設置されている。
ビルの規模別でみると、小規模ビル7.0%、中規模ビル:9.2%、大規模ビル:39.2%となっている。
リフレッシュコーナーがあるビルの比率 年代・規模別内訳 (単位:%)
喫煙ルームについては、全体の58.5%のビルで設置されており、オーナーが設置したものが65.9%、テナントが設置したものが34.1%であった。
セキュリティ対策について
セキュリティ対策については、全体の98.6%のビルで実施されている。
ビルの規模別でみると、小規模ビル:97.7%、中規模ビル:99.0%、大規模ビル:98.6%となっている。
セキュリティ対策のあるビル 年代・規模別内訳 (単位:%)
セキュリティ対策の装備別の実施率は、監視カメラ 83.9%、入退室管理 66.8%、防犯センサー 55.2%、24時間有人管理 54.2%、認証装置 35.7%の順となっている。
AEDの設置状況
AEDについては全体の76.4%のビルで設置されており、設置場所については、「ロビー・廊下等の共用部」 80.2%、「防災センター」 34.1%、「その他」 9.2%であった。
AEDを設置しているビル 年代・規模別内訳 (単位:%)
9.リニューアルの状況
直近2年以内にリニューアルを実施したビルは、全体の 44.9%であった。
ビルの規模別でみると、小規模ビル:60.5%、中規模ビル:39.2%、大規模ビル:44.2%(平均44.9%)となっている。
リニューアルを実施したビルの比率 年代・規模別内訳 (単位:%)
一方、年代別にみると、平成7年以前に竣工したビルのリニューアルの実施率が高くなっている。
ビル室内のリニューアルの内容別の実施率は、「空調改修」 63.5%、「照明改修」 52.9%、「内装改修」 45.9%、「OAフロア改修」 36.5%などとなっている。
また、ビル共用部のリニューアルの内容別の実施率は、「照明改修」50.0%、「壁改修」43.5%、「トイレ改修」33.3%、「空調改修」 25.9%、「給排水設備改修」25.0%、「給湯設備改修」17.6%などとなっている。
10.定期借家契約の状況
契約の状況
定期借家契約を締結しているビルは、全体の52.1%となっている。
区域別にみると、港区64.4%と千代田区55.7%が比率が高く、その他(都心3区以外)が43.4%と比率が低かった。